【結論】「素材」で選ぶな。「大工の腕(C値)」で選べ。

「どの断熱材を使うか」で悩むのは、時間の無駄です。
なぜなら、現在日本で使われている主要な断熱材(グラスウール、ウレタン、セルロースなど)は、正しく施工さえすれば、どれを使っても十分に暖かく、長持ちするからです。
- 一流の大工が施工した「安いグラスウール」 = 最高に暖かく、カビない。
- 下手な大工が施工した「高級なセルロースファイバー」 = 寒くて、隙間風だらけ。
料理に例えるなら、断熱材は「食材」、大工さんは「シェフ」です。
最高級のA5ランクの肉(断熱材)を用意しても、焼く人が焦がしてしまったら(施工不良)、美味しくありませんよね?
逆に、普通のスーパーの肉でも、プロが焼けば絶品になります。
これを踏まえた上で、各素材の特徴(メリット・デメリット)を公平に比較しましょう。
1. グラスウール:誤解された実力者(コスパ最強)

ガラスを繊維状にした、綿のような素材です。日本の住宅で最も普及しています。
- 特徴: 安い、燃えない、シロアリに強い。
- メリット:
- とにかく安い。浮いたお金を窓や設備のグレードアップに回せる。
- 無機質なので劣化しにくい。
- デメリット:
- 施工が超難しい。 ふわふわしているので、隙間なく詰め込むには熟練の技術が必要。
- 「カビる」という悪評: 昔(30年前)の家で、防湿シートの施工が悪くて壁内結露(カビ)が多発したため、イメージが悪い。
- 結論:
- 施工技術が高い会社(C値0.7以下が出せる会社)なら、最強のコスパ素材。
- 「グラスウールはダメ」という営業マンは、自社の職人の腕に自信がないか、勉強不足の可能性あり。
2. 吹き付けウレタンフォーム:施工ミスの救世主

現場でスプレーのように発泡させて、モコモコと膨らむ断熱材です。
- 特徴: 膨らんで隙間を埋めるため、気密が取りやすい。
- メリット:
- 誰がやってもある程度の性能が出る。 隙間ができにくいので、簡単に高気密(良いC値)になりやすい。
- 接着性が高く、経年劣化で下がってくる心配が少ない。
- デメリット:
- 高い。 グラスウールより数十万円アップする。
- 燃えやすい。 難燃処理はされているが、火事になるとガスが出るリスクがある。
- やり直しがきかない。 配線などのリフォームがしにくい。
- 結論:
- 安定感を求めるならこれ。 多くの工務店が採用しているのは、「大工の腕に左右されにくい」から。
3. セルロースファイバー:性能の王様(ただし高い)

新聞紙(古紙)をリサイクルして作った、木質系の断熱材です。
- 特徴: 調湿性能(湿気を吸ったり吐いたりする)があり、防音性が高い。
- メリット:
- 防音性が凄い。 外の音が聞こえなくなり、静かな図書館のようになる。
- 調湿効果。 壁の中の結露リスクを下げてくれる。
- ホウ酸が含まれているため、シロアリやゴキブリが寄り付かない。
- デメリット:
- 一番高い。 ウレタンよりもさらに高い(グラスウールの倍以上かかることも)。
- 沈下リスク。 パンパンに吹き込まないと、将来重みで沈んで上に隙間ができる。
- 結論:
- 予算に余裕があるなら選びたい「プレミアム素材」。 特に防音を気にする人には最高。
4. 比較まとめ表
| 素材名 | コスパ | 気密の取りやすさ | 防音性 | 特徴 |
| グラスウール | ◎最強 | △難しい(腕が必要) | ◯普通 | 安くて高性能だが、職人選びが重要。 |
| 吹付ウレタン | ◯普通 | ◎簡単 | ◯普通 | 隙間ができにくく、安定した品質。 |
| セルロース | △高い | ◯普通 | ◎静か | 防音・防虫・調湿の付加価値あり。 |
5. 結局、どうやって選べばいいの?

素材の特徴は分かりましたが、一番重要なのは「その会社が、その断熱材を使いこなせているか」を確認することです。
モデルハウスや完成見学会で、営業マンにこう聞いてください。
「この断熱材を使って、C値(気密性能)は平均いくつ出ていますか?」
- グラスウールで「C値0.5」を出している会社:→ 超優秀な大工集団です。 安心して任せられます。コスパ最高です。
- ウレタンやセルロースなのに「C値1.0以上(または未測定)」の会社:→ 素材の無駄遣いです。 どんなに高い断熱材を使っても、隙間から熱が逃げています。やめた方がいいです。
【私の推奨】
- 予算を抑えたい: 「C値の測定をしている工務店」で「高性能グラスウール」を使う。これが一番賢いお金の使い方です。
- 予算がある・静かに暮らしたい: 「セルロースファイバー」を指定する。
まとめ:断熱材の名前で家を買うな
今回のまとめです。
- 「最強の断熱材」はない。 どれも一長一短。
- 「素材」よりも「施工精度」が命。 隙間があったら何を使ってもゴミ同然。
- グラスウールは悪くない。 悪いのは「下手な施工」。
- 判断基準は「C値」。 その断熱材を使って、しっかり気密が出せているか確認する。
断熱材の種類にこだわるよりも、「気密測定(C値)」を全棟実施している会社を選ぶ方が、確実に暖かい家になります。
さて、壁の中身(断熱材)が決まりました。
しかし、家には「熱の出入り口」となる巨大な穴が空いています。そう、「窓」です。
実は、冬に家から逃げる熱の50%以上は「窓」から出ていきます。
次回は、「トリプルガラスは必要? アルミサッシは論外? 後悔しない『窓』の選び方」について解説します。
ここをケチると、どんなに良い断熱材を入れても全て無駄になりますよ!


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