【結論】目指すべきは「許容応力度計算による耐震等級3」一択

地震大国日本において、家族の命と財産を守るための最低条件は、ただの「耐震等級3」ではありません。
「許容応力度計算(きょようおうりょくどけいさん)によって確認された、耐震等級3」
これが唯一の正解です。
なぜ、わざわざ難しい言葉を付け加える必要があるのか? それは、世の中には「簡易チェックしかしていない、なんちゃって耐震等級3」が溢れているからです。
この記事を読めば、もう営業マンの「大丈夫です」という言葉に騙されなくなります。
1. 耐震等級の基礎:「等級1」では足りない理由
まずは基礎知識のおさらいです。
「耐震等級」とは、国が定めた住宅の強さを表す指標で、3つのランクがあります。
| 等級 | 強さの目安 | 想定する地震 | 評価 |
| 耐震等級1 | 建築基準法ギリギリ | 震度6強〜7で「倒壊・崩壊しない」 | 一度大きな地震が来たら、もう住めない可能性大。 |
| 耐震等級2 | 等級1の1.25倍 | 避難所(学校など)レベル | 長期優良住宅の最低基準。 |
| 耐震等級3 | 等級1の1.5倍 | 警察署・消防署レベル | 震度7が来ても、補修して住み続けられる可能性が高い。 |
今の時代、「耐震等級3」は必須条件です。
等級1は「とりあえず命は助かるかもしれないが、家はボロボロになり、二重ローン地獄が待っている」というレベルだからです。
しかし、ここからが本題です。同じ「等級3」でも、その確認方法によって中身が全く違うのです。
2. 衝撃の事実:「耐震等級3」には“ニセモノ”がいる

実は、日本の木造住宅(2階建て以下)には、驚くべき法律の特例があります。
「構造計算(家の骨組みが地震の力に耐えられるかの詳細な計算)を、やらなくてもいい(審査を省略していい)」という特例です(4号特例 ※法改正で縮小傾向ですが、まだ影響は大きいです)。
その結果、世の中の多くの工務店やローコストメーカーは、詳細な計算をせず、簡易的なチェックだけで家を建てています。
2種類の「耐震等級3」
- 【ニセモノ】仕様規定(壁量計算)による等級3
- 計算方法: 簡易チェック。「壁の量が足りているか」「バランスは悪くないか」程度しか見ない。
- イメージ: 健康診断の「問診」レベル。「熱はないですか?」「はい、元気です」→合格。
- リスク: 家全体の詳細な力の掛かり方を計算していないため、想定外の揺れで特定の柱や梁が折れる可能性がある。
- 【ホンモノ】許容応力度計算(構造計算)による等級3
- 計算方法: 詳細な計算。柱、梁、基礎など、全ての部材一本一本にかかる地震力や風圧力を計算し、安全性を確認する。計算書は数百ページに及ぶ。
- イメージ: 人間ドックの「精密検査(MRI・CTスキャン)」レベル。体の隅々まで異常がないかチェックする。
- 安全性: 科学的根拠に基づいた、極めて信頼性の高い「等級3」。
信じられないかもしれませんが、どちらも法律上は同じ「耐震等級3」として扱われます。
あなたは、どちらの「等級3」の家に住みたいですか?
3. 熊本地震が証明した「計算方法」の差

「簡易チェックでも、等級3なら大丈夫でしょ?」
そう思われるかもしれません。しかし、2016年の熊本地震(震度7が2回発生)が、その甘い認識を覆しました。
国土交通省などの調査によると、当時の最新基準で建てられた家でも被害が出ました。
その中で衝撃的だったのは、「耐震等級3相当(仕様規定)」と言われていた家の中にも、大破や倒壊してしまったケースがあったという報告です。
一方で、「許容応力度計算(構造計算)を行った耐震等級3」の家は、ほとんどが無被害、または軽微な損傷で済み、その後も住み続けられたという結果が出ています。
震度7が「2回」来る。これは想定外の事態でしたが、その想定外に耐え抜いたのは、精密検査(構造計算)をした家だけだったのです。
4. 営業マンの顔色が変わる「魔法の質問・耐震編」

モデルハウスに行ったら、必ずこの質問をしてください。
「こちらの会社では、全棟で『許容応力度計算(構造計算)』を行っていますか?」
前回の断熱性能と同じく、この質問で会社のレベルが分かります。
- ダメな回答:「構造計算? ああ、うちは壁量計算をしっかりやっていますから大丈夫ですよ!」「うちは長期優良住宅認定を取るので安心です!(※長期優良は簡易計算でも取れてしまいます)」「計算はしていませんが、今まで倒れたことはありません!」→ 危険信号です。 科学的根拠よりも経験や簡易チェックを優先しています。
- 合格の回答:「はい、全棟で許容応力度計算を実施して、耐震等級3を標準としています。」「計算費用として別途〇〇万円かかりますが、必ず実施することをお勧めしています。」→ 信頼できます。 命を守るためのコストを理解している会社です。
※構造計算には、通常30万円〜50万円程度の費用がかかります。しかし、家の総額から見れば1〜2%程度です。これで家族の命が守れるなら、絶対に削ってはいけない費用です。
まとめ:命を守るコストをケチるな

今回のまとめです。
- 「耐震等級3」は絶対条件だが、それだけでは不十分。
- 簡易チェック(仕様規定)の等級3は、想定外の地震で倒れるリスクがある。
- 必ず「許容応力度計算(構造計算)」による耐震等級3を求める。
- 構造計算にかかる費用(数十万円)は、命を守るための必要経費。
家は、家族の命を守るシェルターでなければなりません。
デザインや設備にお金をかける前に、まずは足元、構造の安全性を完璧にしましょう。
さて、家の「強さ」が確保できました。
次回は、家の寿命と快適性を左右する、壁の中の重要プレイヤー「断熱材」について解説します。
グラスウール、ウレタンフォーム、セルロースファイバー…。色々あって迷いますよね。それぞれのメリット・デメリットを比較し、あなたに最適な断熱材の選び方をお伝えします。



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