結論:家づくりは「選択と集中」の連続である

結論から言いますと家づくりは予算との戦いとなります。
希望全ては叶わないと心得ないと費用が青天井となってしまいます。
そこで「要望シート」を作ることで、夫婦の認識ズレをなくす作業を行いスムーズな家づくりを心がけよう!
ただし「性能(UA値・C値)」だけは、何があってもSランク(Must)から外してはいけません。
完成したシートを武器に、営業マンと対等に渡り合い営業トークに騙されないように注意しましょう!。
家づくりが始まると、金銭感覚が麻痺してきます。 普段の買い物では数百円の差を気にするのに、家の見積もりでは「プラス30万円ならいいか」と軽く考えてしまう。これを「30万円の壁紙」と呼びます(冗談ではなく本当の話です)。
そして、予算オーバーが発覚した時、あるいは夫婦で意見が対立した時、家づくりは一気に「苦痛な作業」へと変わります。 せっかくの夢のマイホーム計画で、夫婦仲が悪くなってしまっては本末転倒ですよね。
そうならないための唯一の解決策。 それは、プロ(住宅会社)と会う前に、自分たちの要望を整理した「要望シート」を作ることです。 今回は、予算を守りながら家族全員が納得するための「優先順位の決め方」を4つのステップで解説します。
ステップ1:まずは「欲望」を全て書き出す

最初は予算のことなんて考えなくて構いません。 ノートやスマホのメモアプリを用意して、家族全員で「どんな家に住みたいか」「どんな設備が欲しいか」を思いつく限り書き出してください。これをブレインストーミングと言います。
(例)
- 冬でもTシャツで過ごせる暖かい家
- 30畳の広いリビング
- アイランドキッチン
- 夫の書斎(こもり部屋)
- ミーレの食洗機
- おしゃれな無垢の床
- 庭でBBQができるウッドデッキ
- お掃除ロボットの基地
- etc…
この段階では否定しないのがルールです。「それは高いから無理」と言うのはまだ早いです。まずは夢を広げましょう。
ステップ2:「Must(絶対)」と「Want(希望)」に仕分ける
ここからが最も重要な作業です。 書き出した要望リストを、以下の3つのランクに冷徹に仕分けていきます。
【Sランク:Must(絶対必要)】 これがないなら家を建てる意味がない、というレベル。 命や健康に関わること、絶対に譲れないライフスタイル。
【Aランク:Want(できれば欲しい)】 予算が許すなら採用したい。あると生活が豊かになるもの。
【Bランク:Dream(夢・憧れ)】 できれば入れたいが、予算調整の時は真っ先に削る対象。
私からのアドバイスとして、Sランク(絶対必要)には、必ず以下の2つを入れてください。
- 許容できる予算の上限金額
- 住宅の基本性能(UA値・C値・耐震等級3)
前回までの記事でお伝えした通り、性能は後からリフォームできません。キッチンや壁紙は後からどうにでもなりますが、寒さや地震への強さは変えられないのです。 ここを「Aランク」や「Bランク」に入れてしまうと、予算調整の時に削られてしまい、後悔する家になります。
ステップ3:夫婦の意見が割れた時の解決ルール

要望シートを作っていると、必ず夫婦で意見が対立します。 「俺は書斎が欲しい(Sランク)」vs「私はパントリーが欲しい(Sランク)」 どちらも譲れない場合、どうするか。
やってはいけないのは、声の大きい方の意見を通すことや、じゃんけんで決めることです。 おすすめの解決策は以下の2つです。
【1. 代替案を出し合う】 (例)「個室の書斎は無理だけど、寝室の一角に1.5畳のワークスペースを作るのはどう?」 (例)「パントリーを部屋にするのは無理だけど、キッチンの背面収納を大型にするのはどう?」
【2. 小遣い制にする】 どうしても個人的な趣味(釣り部屋、高級オーディオ室など)を導入したい場合は、その追加費用分を本人のお小遣いからローン返済に充てる、あるいは頭金として本人が出す。 「身銭を切ってでも欲しいか?」と自問自答することで、本当に必要なのかが見えてきます。
ステップ4:プロに見せる「要望シート」の完成

整理ができたら、A4用紙1枚程度にまとめましょう。 これを住宅展示場や工務店に行った際、営業担当者に最初に見せます。
<要望シートの構成例>
【予算】 総額〇〇〇〇万円以内(諸費用込み) ※これを超えると生活が苦しくなります、とはっきり伝える。
【基本性能(Must)】
- UA値:0.46以下
- C値:0.7以下(気密測定実施)
- 耐震等級3(許容応力度計算)
【間取りの要望(Must)】
- 延床面積30〜32坪程度
- 1階で洗濯・干す・しまうが完結する動線
- 4人家族分のシューズクローク
【設備の要望(Want)】
- 海外製食洗機(ミーレ等)
- 無垢フローリング(オーク材希望)
- 乾太くん(ガス衣類乾燥機)
このように要望が明確化されていると、営業マンは「この客は勉強しているな。適当な提案はできないぞ」と背筋が伸びます。 また、最初から的確なプランが出てくるため、打ち合わせの回数も減り、スムーズに進みます。
まとめ:優先順位とは「捨てる勇気」のこと
今回のまとめです。
- 家づくりは予算との戦い。全ては叶わないと心得る。
- 「要望シート」を作ることで、夫婦の認識ズレをなくす。
- 「性能(UA値・C値)」だけは、何があってもSランク(Must)から外さない。
- 完成したシートを武器に、営業マンと対等に渡り合う。
100点満点の家はありません。 しかし、自分たちにとって「何が重要で、何が不要か」が明確になっていれば、80点の予算で120点の満足度を得ることは可能です。
「おしゃれなタイルを諦めて、断熱材を厚くした」 この選択ができるようになった時、あなたはもう「賢い施主」の仲間入りです。
さて、要望も固まり、いよいよ情報収集も本格化してくると、今度は「情報の洪水」に溺れそうになります。 次回は「ブログやSNS情報の鵜呑みは危険!『信者』にならずに情報を取捨選択する方法」についてお話しします。 ネット上の極端な意見に振り回されないための、リテラシー講座です。


コメント