【換気の正解】第1種換気 vs 第3種換気。初期費用が高くても「熱交換」を選ぶべき決定的な理由

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【結論】高性能住宅なら「第1種熱交換」一択。

UA値0.46(G2)、C値0.7以下の高性能住宅を建てるなら、換気システムは「第1種熱交換換気」を選んでください。

予算削減対象としてよく狙われますが、ここを削ると「穴の空いたダウンジャケット」を着ているのと同じ状態になります。

なぜ「第3種(安い方)」ではダメなのか? 詳しく解説します。


1. そもそも「24時間換気」とは?

今の日本の住宅は、法律で「2時間に1回、家中の空気を全部入れ替えること」が義務付けられています(シックハウス対策など)。

つまり、あなたが寝ている間も、仕事に行っている間も、家は常に「外の空気を取り入れ、中の空気を捨てて」います。

ここで問題になるのが、「冬の冷たい空気」と「夏のジメジメした空気」をどう処理するかです。


2. 「第3種換気」の正体:ただの「穴」です

多くの建売住宅やローコスト住宅で採用されているのが、この「第3種換気」です。

  • 仕組み: トイレや洗面所の「換気扇」で空気を排出し、各部屋の壁に空けた「給気口(穴)」から外気を自然に吸い込む。
  • メリット:
    • 安い。 初期費用がほとんどかからない。
    • 電気代が安い。
  • デメリット:
    • 寒い! 外気温0℃の空気が、そのまま0℃で部屋に入ってくる(給気口の近くは極寒)。
    • 熱を捨てる。 暖房で温めた23℃の空気を、そのまま外に捨てる。

高性能住宅での「第3種」はナンセンス

せっかく断熱材や窓にお金をかけて「魔法瓶」のような家を作ったのに、第3種換気にするということは、「魔法瓶のフタを開けっ放しにしている」のと同じです。

冷気が足元を這い、暖房効率がガクンと落ちます。

※ただし、C値(気密)が悪い家(2.0以上)の場合は、第1種を入れても上手く機能しないため、第3種でもOK(というか諦め)です。


3. 「第1種熱交換換気」の正体:省エネの心臓部

高性能住宅推奨なのが、この「第1種換気(熱交換あり)」です。

  • 仕組み: 給気も排気も、機械(ファン)を使って強制的に行う。その際、「熱交換素子」というフィルターを通して熱をリサイクルする。
  • メリット:
    • 熱交換: 外気温0℃の空気を吸い込む時、捨てようとする室内23℃の熱を移して、18℃〜20℃くらいに温めてから部屋に入れる。
    • 快適: 冷たい隙間風が入ってこない。
    • 湿度調整: 全熱交換型なら、冬の乾燥も防いでくれる。
  • デメリット:
    • 高い。 初期費用が30万〜50万円ほどアップする。
    • フィルター掃除などのメンテナンスが必要。

「熱交換率90%」の意味

これは、「捨てようとした熱の90%を回収して戻す」という意味です。

これにより、エアコンの負荷が激減し、光熱費が安くなります。


4. コスパ比較:元は取れるのか?

「初期費用が高いけど、光熱費で元は取れるの?」

これはよくある質問です。

項目第3種換気第1種熱交換換気
初期費用安い高い(+30〜50万円)
電気代(換気扇)月数百円月千円〜二千円
冷暖房費高い(熱ロス大)安い(熱ロス小)
トータルコスト実はあまり変わらない実はあまり変わらない
快適性(プライスレス)寒い(給気口付近)家中どこでも快適

正直に言います。

単純な金額計算(イニシャル+ランニングコスト)だけで見ると、「第1種換気で元を取る」には20年〜30年かかる場合が多いです。

経済的メリットだけで見れば、トントンか、第1種が少し負けるかもしれません。

しかし! プロが第1種を勧める理由は「お金」ではなく「快適性」です。

真冬にソファでくつろいでいる時、首元にヒヤッとした冷気が当たらない。足元が寒くない。

この「不快感ゼロ」の生活**には、差額数十万円以上の価値が絶対にあります。


5. メンテナンスの「罠」に注意!

第1種換気を選ぶ際、一つだけ注意点があります。それは「ダクト(配管)の汚れ」です。

  • ダクト式: 天井裏にパイプを這わせるタイプ。
    • 注意点:数十年後にダクト内が汚れた時、掃除が大変(できない場合も)。
  • ダクトレス式: 壁に直接取り付けるタイプ。
    • メリット:ダクトがないので掃除が楽。メンテナンス重視ならこちらがおすすめ。

また、フィルター掃除をサボると性能が落ちます。

「床面に排気口があるタイプ(マーベックスなど)」「簡単に外せるダクトレス」など、ズボラな人でも掃除がしやすい機種を選んでください。


まとめ:換気は「家の呼吸器」。ケチると健康を損なう

今回のまとめです。

  1. 高性能住宅(高気密)にするなら、「第1種熱交換換気」がセット。
  2. 第3種換気は、冬に冷気を直接取り込むため、快適性が大きく下がる。
  3. 「元が取れるか」よりも「寒くないか」で選ぶべき。
  4. メンテナンス(掃除)が楽な機種を指定する。

家作りにおいて、壁や窓などの「静的」な性能も大事ですが、換気のような「動的」な設備は、日々の体感温度に直結します。

ぜひ、**「熱交換」**の快適さを手に入れてください。

さて、これで家の中の空気環境は整いました。

次回はいよいよ、自然のエネルギーを味方につける設計手法「パッシブデザイン」について解説します。

「南向きの家が一番いい」と思っていませんか? 実は、ただ南に向ければいいわけではないんです。

太陽の光と熱をコントロールする、賢い設計の秘密を解説します。


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