【パッシブデザインとは】「南向き」でも後悔?夏涼しく冬暖かい家を作る「日当たり」と「軒」の黄金ルール

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【結論】「機械」に頼る前に「太陽」を操れ。

「高気密高断熱にして、最新のエアコンを入れれば快適でしょ?」 そう思っているなら、半分正解で、半分間違いです。

いくら家の性能が良くても、「太陽」との付き合い方を間違えると、家は凶器になります。 冬は「タダの暖房」になりますが、夏に無防備に入れると「灼熱のストーブ」になるからです。

機械(エアコン)に頼る前に、設計で自然エネルギーをコントロールする。それが「パッシブデザイン」です。 難しい理論はさておき、絶対に守るべき「パッシブデザインの鉄則」を最初に提示します。

【パッシブデザイン 4つのルール】

  1. 南側の窓: なるべく「大きく」取り、ガラスは「日射取得型(断熱タイプ)」を選ぶ。(※遮熱タイプを選んではいけない!)
  2. 屋根の軒(のき): 軒は必ず「出す」。デザイン重視の「軒ゼロ住宅」は、夏の日射対策においてハイリスク。
  3. 夏の遮熱: カーテン(室内)ではなく、シェードやブラインドで「窓の外側」で遮る。
  4. 土地選び: 「南向き」に固執しなくていい。シミュレーション次第で北向きでも明るい家は作れる。

なぜこのルールが絶対なのか? ここからは、その理由を「冬」と「夏」の戦略に分けて解説します。


1. 【冬の戦略】南の窓は「天然のストーブ」

冬、南側の窓から入ってくる太陽光のパワーは強大です。 掃き出し窓(幅1.6m × 高さ2.0m)1枚から入る熱量は、なんと「電気ストーブ(600W)1台分」以上に相当します。

もし南側に大きな窓が2つあれば、晴れた日の昼間はストーブ2台をガンガン焚いているのと同じ。 高断熱な家なら、昼間は暖房オフで25℃以上になり、夜までその暖かさが持続します。

ここで失敗しないためのポイント

  • ガラスの種類選びが命: 最近の窓ガラス(Low-Eガラス)には、熱を通さない「遮熱型」と、熱を通す「取得型」があります。 東西北の窓は「遮熱型」でOKですが、南面だけは絶対に「日射取得型(断熱タイプ)」を選んでください。 ここを間違えると、せっかくの「タダの暖房」をシャットアウトしてしまいます。

2. 【夏の戦略】「軒(のき)」がない家は、夏に死ぬ

問題は夏です。 冬に嬉しい太陽光も、夏には邪魔なだけ。夏の日射を窓から入れてしまうと、高気密高断熱住宅は「保温性の高いビニールハウス」となり、一度入った熱が逃げず、夜まで暑苦しい家になります。

ここで最強の武器となるのが、屋根の出っ張りである「軒(のき)」や「庇(ひさし)」です。

太陽高度の違いを利用してブロックする

  • 夏の太陽: 高い位置から照りつける → 軒があれば、窓に直射日光が当たらない(日陰になる)。
  • 冬の太陽: 低い位置から斜めに差し込む → 軒があっても、部屋の奥まで光が届く

この絶妙な角度計算こそが、パッシブデザインの真骨頂です。

警告:「軒ゼロ住宅」のリスク

最近流行りの、屋根の出っ張りがない「キューブ型の家(軒ゼロ住宅)」。 スタイリッシュでカッコいいですが、パッシブデザインの観点からは要注意です。 夏の日差しが窓ガラスを直撃し、冷房効率がガタ落ちします。さらに、雨漏りリスクも高くなります。 「デザインのために軒をなくす」場合は、冷房費が上がる覚悟をするか、次に紹介する「外部遮蔽」を徹底する必要があります。


3. カーテンじゃダメ?「外で遮る」ことの重要性

「軒がなくても、カーテンやブラインドを閉めればいいでしょ?」 そう思うかもしれませんが、これは大きな間違いです。

【日射熱のカット率比較】

  • 室内のカーテンで遮る約50% カット(半分入ってくる)
  • 室外で遮る(シェード・すだれ・軒):約80%以上 カット

一度窓ガラスを通過して室内に入った熱は、カーテンで防いでも結局室内に溜まります。 「窓の外側」で食い止めるのが鉄則です。 軒がない場合や、西日が当たる窓には、必ず「アウターシェード」や「外付けブラインド」を設置してください。


4. 「南向きの土地」神話の落とし穴

「パッシブデザイン=南向きの土地が必要」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。

南向きのデメリット

  • 土地代が高い。
  • 南側に道路がある場合、通行人の視線が気になって、結局一日中カーテンを閉めっぱなしになる(=日射取得できない)。

南向きじゃなくてもOKなケース

  • 吹き抜け活用: 2階の窓から光を取り込み、1階に落とす設計なら、北向きや旗竿地でも明るく暖かい家は作れます。
  • シミュレーションの重要性: 工務店に「日当たりシミュレーション」を依頼してください。周りの建物を含めて、冬至(一番日が短い日)にちゃんと日が当たるかを確認することが、方角よりも重要です。

まとめ:自然と戦うな、自然を味方につけろ

最後に、もう一度結論をまとめます。

  1. 冬は「日射取得型ガラス」で南から熱を取り込む(タダの暖房)。
  2. 夏は「軒(のき)」や「シェード」で窓の外側で熱を遮る。
  3. 「軒ゼロ住宅」は夏の暑さに弱いので、対策なしでは危険。
  4. 南向きの土地にこだわらず、シミュレーションで日当たりを確認する。

高価な機械設備にお金をかける前に、まずは「軒を出す」「窓の配置を考える」という基本設計にお金をかけてください。それが、35年間メンテナンスフリーで働き続ける「最強の省エネ装置」になります。

さて、これで家の中の環境(温熱・空気・光)は整いました。 次回は、いよいよ多くの人が悩む「間取り(プランニング)」の章に入ります。

特に論争になりがちな「リビング階段 vs ホール階段」。 「リビング階段は寒いから嫌だ」という意見がありますが、高気密高断熱住宅なら話は別です。 家族のコミュニケーションと空調効率を考えた、現代の正解ルートを解説します。


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