【結論】基準はひとつ。「後から簡単に変えられるか?」

家づくりで予算配分に迷ったら、この質問を自分に投げかけてください。 「それを後からリフォームしようとしたら、いくらかかるか?」
答えが「数百万円かかる、または不可能」なら、それは新築時に借金してでもお金をかけるべき場所(投資)です。 答えが「数十万円で簡単に交換できる」なら、それは今は我慢して削ってもいい場所(浪費、または将来の楽しみ)です。
多くの人が陥る失敗は、この逆をやることです。 目に見える豪華なキッチン(後で変えられる)にお金をかけ、壁の中の断熱材(後で変えられない)をケチる。これでは、「見た目は豪華だけど、住み心地はアパート並み」の家になってしまいます。
今回は、賢い施主が採用すべき「投資リスト」と「削減リスト」を具体的に提示します。
1. 絶対にお金をかけるべき場所(投資=家の基本性能)

これらは家の「骨格」や「皮膚」にあたる部分です。ここをケチると、後で取り返しがつきません。最優先で予算を確保してください。
① 窓・サッシ(最低でも樹脂サッシ+Low-E複層ガラス)
【理由】窓は家の中で最大の「熱の出入り口」だから。 冬場、暖房の熱の約50%は窓から逃げていきます。ここをアルミサッシのままにしておくと、いくら高い断熱材を入れても意味がありません。 APW330(YKK AP)などの「オール樹脂サッシ」は必須。予算が許すならAPW430やトリプルシャノンなどの「トリプルガラス」に投資すると、結露知らずの快適な冬が手に入ります。
② 断熱材・気密施工(UA値0.46、C値0.7以下を目指す)
【理由】壁の中は二度と開けられないから。 断熱材の厚みを増したり、気密テープで隙間を埋めたりする作業は、新築時なら数十万円の追加で済みます。しかし、建てた後にやろうとすれば、壁を全て壊す大工事になり数百万円かかります。 ここは「コスパが最も良い投資」と割り切って、推奨ランク(HEAT20 G2グレード付近)まで上げておきましょう。
③ 耐震等級3(許容応力度計算によるもの)
【理由】家族の命に関わるから。 「耐震等級3相当」という言葉に騙されてはいけません。必ず「構造計算(許容応力度計算)」を実施した上での耐震等級3を取得してください。数十万円の計算費用をケチって、大地震で家が傾いたら元も子もありません。
2. かけると満足度が高い場所(時短・効率化)

基本性能を確保した上で予算が余ったら、次は「日々の暮らしを楽にする設備」に投資します。これらは「時間を買う」投資です。
① 海外製食洗機(ミーレ、ボッシュなど)
【理由】家事労働時間が劇的に減るから。 国産の浅型食洗機とは次元が違います。1日分の食器、鍋、フライパンまで全部放り込んで、寝ている間にピカピカ。導入費は高い(+30万〜)ですが、毎日1時間の自由時間が手に入ると考えれば安いものです。
② ガス衣類乾燥機「乾太くん」
【理由】「洗濯物を干す・取り込む」作業から解放されるから。 一度使うと手放せません。コインランドリー並みのパワーで、タオルがふわふわになります。ドラム式洗濯機の乾燥機能よりも圧倒的に早く、シワになりにくいのが特徴です。
3. 削ってもいい場所(浪費・将来の楽しみ)
ここからは、予算が厳しい時に真っ先に削るべき項目です。これらは「消耗品」であり、将来の交換前提で考えましょう。
① キッチン・お風呂・トイレの「グレード」
【理由】水回りは15年〜20年で壊れる「家電」だから。 最高級グレードのキッチン(数百万円)を入れても、20年もすれば古臭くなり、ガタがきます。 それなら、新築時は標準グレード(または少しだけアップ)に抑えておき、20年後に最新モデルにリフォームする費用を取っておく方が賢いです。**「機能は十分、見た目はそこそこ」**で妥協しましょう。
② 全室の無垢フローリング・塗り壁

【理由】メンテナンスが大変で、コストも高いから。 自然素材は素晴らしいですが、家全体に採用すると莫大な費用がかかります。 「1階のリビングだけ無垢床、2階はシートフローリング」「玄関の壁だけ漆喰、他はクロス」といった**「メリハリ配分」**で十分おしゃれになります。
③ 過剰な造作家具(作り付けの棚など)
【理由】ライフスタイルの変化に対応できないから。 テレビボードや本棚を作り付けにするとカッコいいですが、高くつきますし、模様替えができなくなります。将来の使い方が確定していない場所は、市販の家具で対応する方が柔軟性があり、コストも安く済みます。
まとめ:賢い投資家になろう

今回のまとめです。
- 判断基準は「後からリフォームできるか?」。 できない場所に集中投資する。
- 「窓・断熱・耐震」は絶対にケチらない。 ここが家の寿命を決める。
- 「食洗機・乾太くん」は時間を買う投資。 優先度高め。
- 「設備・内装の豪華さ」は真っ先に削る。 将来のリフォームの楽しみに取っておく。
家づくりは、限られた予算を配分するゲームのようなものです。 目先の華やかさに惑わされず、「35年後も価値が残るもの」にお金を配分してください。
「キッチンは標準だけど、冬はTシャツで過ごせる暖かい家」 これが、私たちが目指すべき賢い家の姿です。
さて、お金の使い方がわかったところで、次は「もらえるお金」の話です。 国は高性能な家を建てる人を優遇してくれます。知っている人だけが得をする補助金制度を見逃してはいけません。 次回は、「補助金は取りこぼすな!子育てエコホーム等、最新の助成金情報の探し方」について解説します。 数十万円〜100万円単位でお得になる情報です。


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