【超入門】「高気密・高断熱」って結局なに?小学生でもわかる「ダウンジャケットとジッパー」の話

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【はじめに】専門用語は覚えなくていい。イメージだけでOK!

「UA値(ユーエーち)」「C値(シーち)」

家づくりを勉強し始めると、必ずこの暗号のような言葉にぶつかります。 物理の授業みたいで頭が痛くなりますよね。でも、安心してください。この言葉の定義を丸暗記する必要はありません。

たった一つの「例え話」さえ覚えておけば、本質はすべて理解できます。

それは、「真冬の極寒の中で、ダウンジャケットを着ている状態」です。

  • = あなたの体
  • 断熱(UA値) = ダウンジャケットの「分厚さ」
  • 気密(C値) = ダウンジャケットの「前のジッパー(チャック)」

これだけです。 では、この例えを使って、なぜ多くの日本の家が寒いのかを解説しましょう。


1. 断熱(UA値)とは?= ジャケットの「分厚さ」

UA値(外皮平均熱貫流率)とは、簡単に言うと「家の熱が、どれくらい外に逃げやすいか」を表す数字です。

  • 数字が小さいほど、熱が逃げない(優秀)
  • 数字が大きいほど、熱がダダ漏れ(低性能)

イメージしてください

真冬の北海道で、ペラペラのウインドブレーカー1枚で立っていたらどうなりますか? 体温がすぐに奪われて、ガタガタ震えてしまいますよね。これが「低断熱(UA値が高い)」の家です。暖房をつけても、熱がどんどん壁や窓から逃げていくので、いつまで経っても部屋が暖まりません。

逆に、モコモコの分厚い高級ダウンジャケットを着ていれば、自分の体温だけでポカポカしてきます。これが「高断熱(UA値が低い)」の家です。一度暖房をつければ、魔法瓶のように暖かさをキープしてくれます。

【結論】 UA値は「0(ゼロ)」に近いほど、分厚いダウンジャケットを着ているということ。


2. 気密(C値)とは?= ジャケットの「ジッパー」

C値(相当隙間面積)とは、「家にどれくらいの隙間(穴)空いているか」を表す数字です。

  • 数字が小さいほど、隙間がない(優秀)
  • 数字が大きいほど、隙間だらけ(低性能)

ここが最重要ポイント!

さて、あなたは最高級の分厚いダウンジャケット(高断熱)を買いました。 しかし、「前のジッパーを全開」にして着ていたらどうでしょうか?

隙間から冷たい風がビュービュー入ってきて、せっかくのダウンも全く意味がないですよね。 これが、日本の多くの住宅で起きている悲劇です。

「断熱性能(UA値)は最高等級です!」とアピールしているのに、「気密(C値)」を無視しているハウスメーカーが山ほどあります。 これは、「最高級のダウンを売りますが、ジッパーは壊れていて閉まりません」と言っているのと同じです。そんなダウン、絶対に買わないですよね?

【結論】 どんなに良い断熱材(UA値)を使っても、隙間(C値)が大きければ、全て台無しになる。


3. 目指すべき「合格ライン」の数値はこれだ!

理屈がわかったところで、具体的に「いくつ」を目指せばいいのでしょうか? 地域によって多少異なりますが、日本の人口の多くが住む「6地域(東京・大阪・名古屋・福岡など)」を基準に、プロのブロガーたちが推奨する「失敗しない目標値」を提示します。

【断熱】UA値の目標:0.46以下を目指せ

  • 0.6(ZEH基準): 国が定める「最低限」のレベル。これだと冬はまだ少し寒いです。
  • 0.46(HEAT20 G2グレード): ここを目指してください。6畳用のエアコン1台で、LDK全体が暖まるレベルです。コスパと快適性のバランスが最強です。
  • 0.26(HEAT20 G3グレード): 最高レベルですが、建築費が跳ね上がります。予算に余裕があれば。

【気密】C値の目標:1.0以下(できれば0.7以下)

  • 5.0(昔の家): 隙間だらけ。ハガキ5枚分くらいの穴が空いています。
  • 1.0以下: ここが「高気密」と呼べる最低ラインです。
  • 0.7以下: 優秀です。換気システムが計画通りに機能します。
  • 0.5以下: 一条工務店やスーパー工務店レベル。非常に快適です。

営業マンへのキラーフレーズ: 「UA値は0.46付近、C値は0.7以下を保証できますか?」 この質問をして、自信を持って「イエス」と言える会社なら、信頼度はかなり高いです。


4. なぜ「C値」を嫌がる会社が多いのか?

UA値(断熱)は、設計図上で「計算」だけで出せる数字です。良い断熱材を使えば、誰でも良い数字が出せます。 しかし、C値(気密)は「現場の実測」でしか出せません。

大工さんが丁寧に気密テープを貼り、隙間を埋めるという、地道で丁寧な作業が必要です。 つまり、C値が良い会社とは、「現場の施工レベルが高く、大工さんの腕が良い会社」という証明なのです。

「C値なんて測らなくていいですよ」と言う会社は、「ウチは大工の手間に時間をかけたくない(=雑な工事をするかもしれない)」と言っているのと同義だと疑ってください。


まとめ:魔法瓶のような家を作ろう

今回のまとめです。

  1. 断熱(UA値)は、ダウンジャケットの「厚み」
  2. 気密(C値)は、ダウンジャケットの「ジッパー」
  3. ジッパー(C値)が開いていたら、厚み(UA値)は意味がない。
  4. 目指すは「UA値0.46」「C値0.7」の黄金比。

この2つの数字は、家を建ててからでは絶対に変えられません。 キッチンやお風呂は15年後にリフォームできますが、壁の中の断熱材や隙間を直すには、家を一度壊すしかないからです。

だからこそ、契約する前に、この数字だけはしつこいくらい確認してください。

さて、性能の基準はわかりました。 しかし、性能を上げれば当然、建築費用も上がります。「そんなにお金をかけられない!」という方もいるでしょう。

そこで次回は、夫婦喧嘩の火種になりやすい「家づくりの優先順位決め方会議」についてお話しします。 限られた予算の中で、どこにお金をかけ、どこを削るべきか? 家族の幸せを守るための「仕分け術」を伝授します。


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