【結論】目指すべきは「UA値0.46」と「C値0.7」

東京や大阪など(6地域)で家を建てる場合、快適に暮らすための合格ラインは以下の通りです。
- 断熱性能(UA値):0.46 以下(等級6 / HEAT20 G2グレード)
- 気密性能(C値):0.7 以下(全棟気密測定を実施)
この数値をクリアしていれば、真冬の朝に布団から出るのが辛くなくなり、真夏もエアコン1台で涼しく過ごせます。
逆に、これより悪い数値(例:UA値0.6、C値2.0など)だと、エアコンの効きが悪く、足元がスースーする「普通の家」になる可能性が高いです。
なぜこの数値なのか?
ZEH基準(UA値0.6)ではダメなのか?
その理由を詳しく解説します。
1. 「高気密・高断熱」には定義がない

まず知っておいてほしいのは、飲食店の「冷やし中華はじめました」と同じくらい、住宅業界の「高気密・高断熱はじめました」は定義が曖昧だということです。
- 本物の高性能住宅: UA値0.26、C値0.2
- 自称・高性能住宅: UA値0.87、C値5.0(隙間だらけ)
実は、どちらも「高気密・高断熱住宅」と名乗って販売して良いことになっています。 法律上の規制がないからです。
だからこそ、私たちは「形容詞(暖かい)」ではなく「数値」で判断しなければなりません。
2. 断熱(UA値)の目標:ZEH基準で満足してはいけない

UA値(外皮平均熱貫流率)は、「熱の逃げやすさ」を表す数値です。
数字が小さければ小さいほど、熱が逃げない魔法瓶のような家になります。
国の基準にはいくつかのランクがありますが、プロが推奨するラインは明確です。
※以下は東京・大阪・名古屋などの「6地域」の場合です。
| レベル | 基準名 | UA値 | 評価 |
| 最低ライン | 省エネ基準(等級4) | 0.87 | 冬寒い。論外。 |
| 今の普通 | ZEH基準(等級5) | 0.60 | LDKは暖かいが、トイレや脱衣所は寒い。 |
| 推奨ライン | HEAT20 G2(等級6) | 0.46 | 家全体がほぼ一定温度。コスパ最強。 |
| 最高峰 | HEAT20 G3(等級7) | 0.26 | 快適だが建築費が高い(+300万円〜)。 |
なぜ「G2(0.46)」なのか?
ZEH基準(0.6)だと、冬場の体感温度改善には不十分で、結局ファンヒーターや床暖房に頼ることになり、光熱費がかさみます。
一方、G2(0.46)まで上げると、小さなエアコンだけで暖かさが持続し、建築費アップ分を約15年〜20年の光熱費削減で回収できるという試算が多いからです。
つまり、最もコストパフォーマンスが良いのが「UA値0.46」なのです。
3. 気密(C値)の目標:0.7以下でないと断熱の意味がない

C値(相当隙間面積)は、「家にどれくらい隙間があるか」を表す数値です。
数字が小さいほど、隙間がない高気密な家です。
どんなに分厚いダウンジャケット(良いUA値)を着ていても、前のジッパーが全開(悪いC値)なら凍えますよね? それと同じです。
- 昔の家: C値 5.0(ハガキ5枚分の隙間)
- 少し前の家: C値 2.0(ハガキ2枚分の隙間)
- 合格ライン: C値 0.7 以下(ハガキ0.7枚分の隙間)
- 理想: C値 0.5 以下
C値は「現場」でしかわからない
重要なのは、UA値は計算だけで出せますが、C値は実際に建てた現場で「気密測定器」を使って測らないと出ないということです。
カタログに「C値相当」と書いてあっても信用してはいけません。
「全棟気密測定を行っていますか? 平均C値はいくつですか?」と必ず聞いてください。
4. 営業マンに聞くべき「魔法の質問」
モデルハウスに行ったら、家の豪華なキッチンや吹き抜けを見る前に、営業マンにこう聞いてください。
「御社の標準仕様のUA値はいくつですか? また、C値の全棟測定はしていますか?」
この質問に対する反応で、その会社のレベルが一発でわかります。
- ダメな回答:「UA値? あまり気にしなくて大丈夫ですよ。うちは最新の工法なので暖かいです!」「C値測定はやっていません。意味がないですから。」→ 即、候補から外してOKです。 勉強不足か、性能に自信がない会社です。
- 合格の回答:「標準でUA値0.5以下を目指しています。G2グレードですね。」「気密測定は全棟実施しており、平均C値は0.4です。」→ 信頼できるパートナー候補です。 話を進めましょう。
まとめ:数値は嘘をつかない

今回のまとめです。
- 「高気密高断熱」という言葉を信じるな。
- 断熱(UA値)の目標は「0.46(G2グレード)」。 ZEH基準(0.6)では物足りない。
- 気密(C値)の目標は「0.7以下」。 必ず「気密測定」を契約条件に入れる。
- この数値を即答できない会社には頼まない。
この基準値(0.46 / 0.7)は、今の住宅業界における「快適へのパスポート」です。
これをクリアしておけば、少なくとも「寒くて後悔する家」にはなりません。
さて、快適さの基準(数値)がわかりました。
しかし、家にはもう一つ、絶対に譲れない性能があります。それは「家族の命を守る強さ」です。
次回は、「耐震等級3は当たり前!『構造計算』をしていない耐震等級3が危ない理由」について解説します。
同じ「等級3」でも、計算方法によって強度が全く違うという、業界の闇に切り込みます。



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