【結論】「本体価格」は総額の7割に過ぎない。残りの3割を見込め

住宅広告に載っている「坪単価」や「建物本体価格」は、車で言えば「タイヤとハンドルがついていない車体の価格」のようなものです。それだけでは生活できません。
家づくりにかかる費用の黄金比率は、一般的に以下の通りです。
- 建物本体工事費:約70%(ここが坪単価の対象)
- 付帯工事・諸費用:約30%(ここが隠れコスト)
つまり、チラシで「2,000万円で建つ!」と書いてあっても、実際には残り30%(約800万円〜)の費用が別途必要になり、総額は3,000万円近くになるのが現実です。
この「見えない3割」を知らずに契約すると、後から「予算が足りないから、断熱性能を削ろう」という最悪の選択を迫られることになります。
今回は、見積もりの落とし穴となる「3つの隠れコスト」について詳しく解説します。
1. 坪単価のマジック:分母と分子の操作

そもそも、坪単価には法的な定義がありません。 ハウスメーカー各社が「安く見せるため」に、独自の計算式を使っています。
マジック①:分母(面積)を大きくする
通常、家の広さは「延床面積(のべゆかめんせき)」で表しますが、メーカーによっては**「施工面積(せこうめんせき)」**で割って計算します。 施工面積には、本来含まれない玄関ポーチ、ベランダ、吹き抜けなども含まれます。 分母(面積)を大きくすれば、計算上の坪単価は安く見えるからです。
マジック②:分子(価格)を小さくする
坪単価に含まれる設備もバラバラです。 照明、カーテン、エアコンが含まれている会社もあれば、**「キッチンすらオプション扱い」**で、箱だけの価格を表示している会社もあります。
「A社は坪60万、B社は坪70万。だからA社が安い」という比較は、全く意味がありません。
2. 隠れコスト①:付帯工事費(ふたいこうじひ)

ここからは、本体価格に絶対に含まれない「別途費用」の正体です。 まずは**「家本体以外」**の工事費です。これが意外と高額です。
- 屋外給排水工事(約100万円〜): 道路の水道管から、敷地内に水を引く工事。
- 地盤改良費(約100万円〜): 地面が弱い場合、杭を打つ工事。調査するまで金額が確定しない「恐怖の項目」です。
- 残土処分費(数十万円): 基礎工事で掘った土を捨てる費用。
これらは土地の条件によって大きく変わるため、広告の価格には最初から含まれていません。しかし、払わないと家は建ちません。
3. 隠れコスト②:諸費用・その他(しょひよう)
次に、工事費以外にかかる**「手続きや税金」**のお金です。これも現金で必要になることが多いので注意が必要です。
- 登記費用(約30万円〜): 家の名義を登録する司法書士への報酬と税金。
- 住宅ローン手数料・保証料(数十万円〜): 銀行に支払うお金。ネット銀行などは手数料が高い場合があります。
- 火災保険料(10年で数十万円): 必須です。地震保険もセットにするのが一般的。
- 印紙税・申請手数料: 契約書に貼る印紙代や、確認申請の費用。
4. 隠れコスト③:入居後の生活必需品
最後に、意外と忘れがちなのが**「住める状態にするためのお金」**です。 建物が完成しても、これらがないと生活できません。
- 外構工事費(150万円〜300万円): 駐車場、フェンス、門柱、アプローチ、庭。 ※「家の予算が足りないから外構で調整しよう」と考えがちですが、土のままだと玄関が泥だらけになります。最低限の予算取りは必須です。
- カーテン・照明・エアコン(約100万円): 部屋数が多いと、ここだけで100万円飛びます。
- 引っ越し費用・家具家電購入費: 新居に合わせてソファやダイニングテーブルを新調すると、あっという間に数十万円です。
【対策】営業マンには「総額」を聞け

では、どうすれば騙されずに済むのでしょうか? 展示場に行ったら、必ずこう質問してください。
「このモデルハウスと同じ仕様で建てた場合、住める状態になるまでの『総額(乗り出し価格)』はいくらですか?」
さらに、資金計画書(見積もり)が出てきたら、一番下の合計金額を見るのではなく、「含まれていない項目(別途見積もり)」がないかを血眼になって探してください。
- 「外構費」は入っていますか?
- 「地盤改良費」の予算取りはされていますか?
- 「カーテン・照明」は含まれていますか?
これらが「別途」となっていたら、自分でその金額を足し算しなければなりません。
まとめ:坪単価は忘れて、総予算で考えよう

今回のまとめです。
- 「坪単価」は操作された数字。 安易に信じてはいけない。
- 建物本体は「7割」。 残り「3割」の隠れコストを見込んでおく。
- 地盤改良や外構費など、見積もりに載らない金額を予算取りする。
- 比較すべきは「総額」。 住み始めるまでにいくら払うかが全て。
家づくりにおいて、「安く見せる数字」はあっても、「安くなる魔法」はありません。 表面上の安さに飛びつくと、最終的に「断熱材を薄くする」「窓を小さくする」といった、家の寿命と快適性を削るコストダウンを強いられます。
そうならないために、まずは「隠れコストを含めたリアルな総額」を把握することから始めてください。
さて、お金の怖い話が続きましたが、次はお金を「減らす」ポジティブな話をしましょう。 間取りの工夫次第で、建築費用は数百万円単位で落とせます。 次回は、「建物価格を200万円下げるための『間取りの減額調整』テクニック10選」を解説します。 質を落とさず、無駄な贅肉だけを削ぎ落とす、プロの減額術を伝授します。



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