【結論】今の「普通の家」は、数年後に「不良債権」になるリスクがある

最初に結論から言います。
今、家づくりをしているあなたは、非常に重要な「時代の転換点」に立っています。
もし、住宅会社の営業マンに言われるがまま、今の法律の「ギリギリ合格ライン」で家を建ててしまうと、数年後には「既存不適格(きぞんふてきかく)」と呼ばれる、今の基準を満たしていない「古い家」扱いをされる可能性があります。
「新築で建てたはずなのに、中古市場に出したら二束三文で買い叩かれる」
そんな悲劇を避けるために、今回は「2025年省エネ基準適合義務化」と「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」について、施主が知っておくべき必須知識を解説します。
1. 2025年から何が変わる?「省エネ基準適合義務化」とは
簡単に言うと、「冬寒くて夏暑い、燃費の悪い家は、もう建ててはいけません」という法律がスタートしました。
これまでは、「断熱性能が低い家」でも建築確認申請を通すことができましたが、これからは「断熱等級4(UA値0.87相当 ※6地域)」を満たさない家は、そもそも建てることができなくなります。
「じゃあ、法律を守って建てれば安心だね!」
そう思ったあなた。ここが最大の落とし穴です。
国の「最低基準」は低すぎる
実は、この義務化される基準(断熱等級4)は、平成28年(2016年)に作られた基準であり、世界的に見ると「周回遅れの低レベル」なんです。
このレベルの家は、冬場は普通に寒いですし、光熱費もかかります。
「法律を守る=快適な家」ではありません。
「法律を守る=最低限、雨風がしのげる家」程度に考えておくのが正解です。
2. 目指すべきは「ZEH水準(断熱等級5)」以上
では、私たちはどのレベルを目指せばいいのでしょうか?
国は2030年までに、新築住宅の平均を「ZEH(ゼッチ)水準」に引き上げることを目標にしています。
つまり、今建てるなら「ZEH水準(断熱等級5 / UA値0.6以下)」が実質的な「標準」になります。
さらに、私たちが参考にしている高性能住宅ブロガーや専門家たちは、さらに上の「断熱等級6(HEAT20 G2 / UA値0.46付近)」を推奨しています。
| レベル | 断熱等級 | UA値(6地域) | 評価 |
| 法律の最低ライン | 等級4 | 0.87 | 寒くて光熱費が高い(論外) |
| ZEH水準 | 等級5 | 0.60 | これからの「普通」。最低ここを目指す |
| 推奨レベル | 等級6 | 0.46 | コスパ最強。快適で資産価値も残る |
これから35年ローンを組むなら、数年後に義務化されるかもしれない「等級5」や「等級6」を先取りしておかないと、資産価値が一瞬で陳腐化するのです。
3. そもそも「ZEH(ゼッチ)」って何?

ZEH(Net Zero Energy House)とは、直訳すると「エネルギー収支がゼロの家」。
もっと簡単に言うと、以下の3点セットが揃った家のことです。
- 高断熱な外皮(壁・窓): エネルギーを無駄にしない「魔法瓶」のような箱。
- 省エネ設備: エアコンや給湯器が高効率。
- 創エネ設備(太陽光発電): 自宅で電気を作る。
「使う電気」−「作る電気」= 0(ゼロ)以下 になる家のことをZEHと呼びます。
「ZEH Oriented(オリエンテッド)」という選択肢
「太陽光パネルまでは予算的に厳しい…」という方もいるでしょう。
そんな方は、「ZEH Oriented」を目指してください。
これは、太陽光パネル(創エネ)がなくても、「断熱性能と省エネ設備だけでZEH基準を満たしている家」のことです。
まずはこの「箱の性能(断熱等級5以上)」を確保することが、資産価値を守る第一歩です。
4. 資産価値の視点:家は「燃費」で選ばれる時代へ

車を買う時、「リッター何キロ走るか(燃費)」を気にしますよね?
これからは、中古住宅も「燃費(光熱費)」で選ばれる時代になります。
不動産ポータルサイト(SUUMOなど)でも、すでに「省エネ性能ラベル」の表示が始まっています。
将来、あなたが家を売ることになった時、買い手はこう考えます。
- 物件A: 築15年、断熱等級4(旧基準)。冬寒く、光熱費が月3万円かかる。
- 物件B: 築15年、断熱等級6(ZEH水準超)。冬暖かく、光熱費が月1.5万円で済む。
たとえ物件Aが少し安くても、賢い買い手は「ランニングコスト(光熱費)」が安い物件Bを選びます。性能の低い家は、値下げしないと売れなくなってしまうのです。
高性能な家を建てることは、将来の自分への「資産防衛」でもあります。
5. 太陽光発電は載せるべき?「後乗せ」は損をする

最後に、ZEHの要である「太陽光発電」について。
結論から言うと、「予算が許すなら、新築時に最大容量を載せるべき」です。
最近は電気代が高騰しており、売電(電気を売る)よりも自家消費(自分で作って自分で使う)のメリットが大きくなっています。
- 屋根貸しなどはNG: 自分の屋根なので、自分で購入して載せるのが一番利益が出ます。
- 新築時のメリット: 足場代がかからず、屋根と一体で施工できるため雨漏りリスクも減らせます。後から載せると割高になります。
太陽光は投資回収が計算できる数少ない設備と言われており積極的に採用したい設備です。
贅沢品ではなく、「光熱費高騰への保険」として検討してみてください。
まとめ:2030年の基準で、今建てよう
今回のまとめです。
- 2025年の省エネ基準義務化(等級4)は「最低ライン」。 これで満足してはいけない。
- 資産価値を守るなら「断熱等級6(UA値0.46)」を目指すべき。
- 家は「燃費」で売買される時代。 低性能な家は将来の負債になる。
- 太陽光発電は「光熱費削減装置」。 新築時に載せるのが正解。
「法律が変わるから」という受け身の理由ではなく、「家族が快適に、経済的に暮らすため」に、国の基準よりも高い性能を選んでください。それが結果として、あなたの資産を守ることになります。
さて、性能の話が続きましたが、家づくりにはまだ重要なステップがあります。それは「土地選び」です。
次回は、「土地探しより先にやるべきこと。いきなり不動産屋に行ってはいけない理由」について解説します。
良い土地を見つける人は、不動産屋に行く前の「準備」が違います。



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